アップデート


■先週の土曜日(7/20)、関係している会社が、
著名な講師を招き、立派な会場を貸し切って
講演会を行いました。


第30回となる社員勉強会。一般の方も2千円で
聴講でき、大学生以下の方は無料ということで
学生さんも30名ほど参加し、大盛会となりました。





夕方から、都内に移動し、大学院時代の仲間たち
との旧交を温めました。


彼らは、多忙な経営者でありながら、社会人
大学院生として、経営学と、人としてのあり方を
学び直した人たちなので、強い好奇心と向上心を
持ちあわせています。


そんな彼らと話していて感じたことを共有します。





■明治の事業家で、松永安左エ門という人が
います。


「電力の鬼」といわれ、日本の電力事業の発展に
大きく寄与した人物です。


彼いわく
『経営人として成長したいなら、どんな経験を
積めば良いのでしょうか?』と問われて


『自分という人間と向き合う時間を長く確保する
ことが重要である。そのためには3つの「T」が
必要だ。

それは「投獄」「倒産」「大病」である』と。





■松下幸之助・稲盛和夫・孫正義。
誰もが知っている経営者ですが、彼らに共通
しているのは大病を経験していることです。


彼らが病を得て、自分と向き合ったことは多くの
本に書かれています。


しかし、私たち凡人は、「大病」や「倒産」
「投獄」など、どれも、経験したくないことです。





■通常、経営者は自分にとって、居心地が悪く
ない状況にあります。
(「大病」や「倒産」「投獄」などと比べて)


先にご紹介した大学院の仲間たちは、居心地の
悪い環境に身をおくことを、自ら選んだ人たち
です。

それは

・自分の年令や役職は考慮されない

・ちやほやされない

・厳しい指摘を受ける

・忙しい中、時間を作り勉強しなければならない

などなどです。





■そんな彼らと話していて、思い出した言葉が


<アップデート>です。


アップデートとは、本来、ソフトウェアや
アプリケーションを最新の状態に移行するための
作業を指しますが


近年は、人も自分自身を改善し、新しい知識や
スキルを獲得することも意味します。





■環境変化が激しい昨今、過去OKだったことが、
今ではNGあるいは、即逮捕、といったことが
数多くあります。たとえば・・・


・立ち小便

・飲酒運転

・学校での体罰

・飛行機内での喫煙

・職場でのプライバシー干渉

・休日出勤の奨励

・ゴミのポイ捨て

・電話帳の使用

・職場でのジェンダー差別

・書類の手書き

・男女の役割分担

・レジ袋の無料配布などなど、


数え上げたらキリがありません。
そして、これから、上記に掲げていない新たな
事柄がどんどん増えていきます。




■同様に、中小企業の場合、無自覚のうちに、
我が社の常識は、世間の非常識となっている
状況もよくみられます。


いつの間にか、時代に取り残されぬよう、人と
して、ビジネスパーソンとして、アップデート
すべく、せめて、


『自分という人間と向き合う時間を長く確保する』
という習慣強化をしようと、思いを新たにした
週末のイベントでした。


以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。

日々是新 春木清隆

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変化は避けられないが、成長は選択である。
ジョン・C・マックスウェル (牧師 1947年~ )
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『生きがいについて』【読書メモ】



■年商3億円、債務超過だった会社に入社し、
9年目の2007年、株式公開を果たしました。


その2~3年前から、
「このままでは自分はダメになる」
と感じ始めていました。


それは、仕事でかかわる人たちの、私への対応が、
肯定や称賛しかないように感じられたからです。


当時、40代の私は、子供がまだ小学校就学前で、
経済的な安泰を考えた場合、その場にとどまった
方が得策でしたが、その道を選ばずに現在に
至ります。





■困難はありましたが、当時に比べて、物心共に
はるかに豊かになっている現在の境涯・・・。


目の前の損得に惑わされずに、本当の自分の心の
声を聴いて、それに従うことの大切さを痛感して
います。


当時、力をもらった本が
『生きがいについて』です。


今から半世紀以上前に書かれたこの本を
最近改めて読み直し、そのメッセージは、
色褪せるどころか、時代を超えた識見に
溢れていたので、ここにご紹介します。





■『生きがいについて』は1966年
神谷恵美子(かみや みえこ、1914~1979年)
によって著されました。


神谷美恵子は、東京大学医学部を卒業後、精神
科医としてのキャリアを築きながら、心理学と
哲学を融合させた独自の視点で人間の心の探求を
続けた人です。





■『生きがいについて』は、生きる意味や価値を
深く考察し、精神科医としての豊富な経験と
膨大な資料を読み込み、書かれたものです。


読み進むうちに、作者が読者に対して、人生に
おける目的や、意義を見つける手助けをしようと
する深く温かいオモイが伝わってきます。


私はこの本から、希望と勇気を感じ、自己探求と
成長のための重要な指針を得ました。


困難な状況に直面した時に読むと心の支えと
なる方も多いと思います。


以下、本の中から共鳴した点などをご紹介します。





・生きがいということばは、日本語だけにある
らしい。こういうことばがあるということは、
日本人の心の生活の中で、生きる目的や意味や
価値が問題にされてきたことを示すものであろう。


・深い認識や観照や思索のためには、よろこび
よりもむしろ苦しみや悲しみの方が寄与する
ところが大きいと思われる。


・使命感に生きるひとにとっては、自己に忠実な
方向に歩いているかどうかが問題なのであって、
その目標さえ正しいと信じる方向に置かれて
いるならば、使命を果たしえなくても、
使命の途上のどこで死んでも本望であろう。


・「自己実現」と単なる「わがまま」の区別は、
生きがい感と結びつけて考えてみれば明らか
である。


・「わがまま」と言うのは、自我の周辺部にある、
末梢的な欲求に固執することで、これが満たされ
ても真の生きがい感は生まれない。


・他人の目に対して、業績をあげることや、
自尊心を保つことが、第一の問題ではなく、
何よりも自己に対して、自己を正しく実現
しているかどうか、に関係した欲求であると
思われる。

・もしこの意味で自己にもとっているならば、
外面的、対人的に、どんなに立派に見えようとも、
心の底には、やましさの意識が潜んでいて、
心の眼はーーーそしてしばしば肉体の眼までも、
自己も人生をも正視することができなくなり、
横目づかいや上目づかいをするようになる。


・どうしても苦悩を打明けるひとがいないとき
には、文章に書くと言うのも安全弁の役に立つ。


・真摯な探求と悩みなしに、ひとの心に光明を
もたらされたためしはない。


・かりに平和が続き、オートメイションが発達し、
休日がふえるならば、よほどの工夫をしない
かぎり「退屈病」が人類の中にはびこるのでは
ないだろうか。


以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆

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死に直面した人の心を一番苦しめるものの一つは
「果たして自分の人生に意味があったか」
ということである。

神谷恵美子(精神科医 作家1914~1979年)
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どんな人にも役割がある



■先週、大学生の息子と、食事をしながらの
会話の中で、


「今、自分の周囲にいる大学生を100とした時、
ヤル気や向上心をもって努力している人の割合は
どれくらい?」


と聞いたところ「20%くらいかな」という答え
でした。


思っていたよりも少ない、20%と聞いて、
「ふーん」とうなってしまいました。





■というのは、わたしが仕事をしている動機の
一つが


「1人でも多くの人に仕事の喜びを感じとって
もらいたい」があります。


仕事の喜びとは

「仕事は、大変だけど、とてもやり甲斐のあること」

「仕事は、やればやるほど、人に喜んでもらえること」

「仕事は、お金では買えない、大切なことを得られること」

などです。


これは、実業の経験をつうじて、私の岩盤信条と
なっているものです。





■しかし、息子との会話から、前途有望な
若者たちの多くが、やる気に満ち溢れて
いない現状をきいて、考えてみると


そうだよな、2:6:2の法則っていうし、
実際、今までの経験から、世の中、
だいたいそんなもんだよな〜と思いました。


自然界でも、働きアリの法則で、
その割合は2:6:2といわれていますし、
働きバチも同様です。





■そう考えてみると、努力している(と思われる)
2割以外の8割の人たちの中にも、会社や組織に
対して、貢献していることが見えてきます。


例えば、

・活動量の多い人たちの支援やフォロー

・組織のメンテナンスや維持

・緊急時のピンチヒッター

・場を和ますなどなどです。





■そうです。


どんな人にも、その人独自の持ち味が有り、
その自分らしさを発揮することで、
自分以外の人の役に立つことができ、
役立った実感が、次なる行動のエネルギーの
源泉になっていることに気づかされました。


そのような人は、組織の中では、おおむね、
慎ましく、丁寧に、すごされていて
目立つ存在ではありません。





■ここまで書いてきて、以前、小欄でご紹介した
2021年に高校を卒業した入社3年目の社員さんの
ことを思い出しました。


この方(女性)は、先に書いたように、控えめな
方で、大勢の中にいる時も、自分から話し出す
タイプではありません。


そんな彼女が、研修のテーマである
「何のために仕事をしているのか」
について書いた文章をご紹介します。



<以下 前略>

この会社に入社して、新入社員研修を受けた際、
「天職」の話が上がった。


この研修を受けていた時、仕事の辛さや大変さなど、
マイナスの面でしか視点を持つことができず、
「天職」と聞いても、あまりぴんと来なかった。


しかし、この仕事を始めて数年経過した。
今では、「天職」という言葉を身近なものと感じ
ている。


行っていて大変に感じることや、辛くて逃げ出し
たいと感じることもあるが、お客様の力や助けに
なれていることを知ると、この仕事を選んで良
かったと感じている。


私は1人でも多くの人を何らかの形で支え笑顔に
するために働いている。


それはお客様だけではなく、一緒に働いている
スタッフに対してもだ。

<以上 後略>


現在の日本で、自分が就いている仕事を天職と
感じている人は、どれくらい、いるのでしょう?


彼女のように、自分らしさを活かし、
「仕事のやりがい」を感じている人が一人でも
増えるよう、そのきっかけ作りをやり続けて
いこうと、改めて思った次第です。



以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆

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すべての人には、彼らが社会において果たすべき
役割がある。その役割を見つけることが、
自己実現の鍵である。
カール・ユング(心理学者 1875~1961年)
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ゆでガエルになっていないか?
(経営戦略を考える)


■先週は出張で、仙台に3泊4日しました。
仙台駅は毎月、複数回利用しますが、5月に
利用した際、駅構内にある店舗前通行量の多い
3階の書店が閉店していました。





■気になって、全国の書店数の推移を調べて
みると、以下のように2003年の21,000店から
2022年の11,500店と、約半減しています。


(出所:経産省HP)





■この要因は、種々ありますが、最大の因子は
アマゾンに代表されるネット通販の進化、台頭に
よるものです。


先にご紹介した書店も、何度か利用していますが、
その品揃えや接遇に明らかな落ち度はありません
でした。





■これは、現場の戦闘能力や経営戦術の格差
ではなく、明らかに、経営戦略の失敗によるもの
です。


すなわち、新たな競争相手の出現や、購買行動の
変化といった、環境変化に、経営戦略が対応でき
なかった事例で、今、私たちの周りでは、
あらゆる業種で同じようなことが起きています。


たとえば、先週の日経新聞で、
『セブン1000店で処方薬受け取り』の見出しの
記事が掲載されていましたが、これから既存業界
へは、津波のような暴力的なエネルギーと速さで
侵食が進むはずです。





■筆者が新卒で入社した会社も、まさにコンビニ
からの侵食で、市場を奪われた会社でした。


その兆候を感じてから約10年、経営戦略の転換
を訴え続けましたが、力不足で、会社更生法に
至りました。


しかし、旧経営陣が退陣したあと、かねてから
提案していた戦略転換をすすめました。


(筆者作成)


具体的には、強い競争相手のいる持ち帰り市場
から、強い競争相手の少ない飲食と、
非日常(高価格)の持ち帰りに経営資源を集中
させたのです。


結果、働いている人や店の立地は変わらずに
株式再上場に至ります。





■上記の事例は、環境の変化に対する人間や
組織の鈍感さを表現した


<ゆでがえる現象>


とも例えられます。
この表現の由来は、ご存じの方も多いと思い
ますが、水を入った鍋にカエル入れ、ゆっくりと
温めると、カエルは温度変化に気づかずに
茹でられて死んでしまうというストーリーです。



経営においては、市場環境の変化に気づかず、
競争力を失っていく状況です。





■実際の事例として


・液晶テレビ市場の変化に対応が遅れ、
経営危機に陥り、海外企業に買収されたシャープ


・不適切会計処理や原子力事業の失敗により、
倒産の危機に直面し、半ば解体した東芝など
数多くの事例が存在します。




■では、会社が<ゆでがえる現象>に陥らずに、
適切な経営戦略を採るには、どうしたらよいので
しょうか?


申し訳有りませんが、「これ!」という最適解は
思い浮かびません。


しいて上げるとすると、トップが


<何としてでもそうしよう>


という、強い意思を持ち続けること
ではないでしょうか。



以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆


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戦略とは、何をしないかを決めることである
マイケル・ポーター(経営学者 1947年~)
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■先週、妻と映画マッドマックス:フュリオサを
観てきました。


この映画は1970年代に第一作が作られ、その後、
シリーズ化した作品なので、ご存知の方も
いらっしゃるかと思います。




■物語の概要は、核戦争の末、荒廃した環境で、
水と食料と資源を奪い合い、暴力がすべてを
支配する絶望的な未来を描いた世界。


今回は、女性戦士フュリオサを主人公に、
圧倒的な迫力とスピード感でグイグイと
引き込まれていきます。





■観終わった感想を自宅で妻と交わしましたが、
彼女は途中から、暴力シーンなどの多さから、
お腹いっぱいになったそうです。


そういえば、我が家ではネガティブな情報の多い
テレビは、録画したものを観る程度ですし、
ホラー(恐怖)映画も一切観ません。





■これは意図して選択していることです。
つまり、身体に良くないと思われることは、
極力取り入れない、ということです。


はじめは、20代の頃、食に関する仕事をして
いたので、食品添加物について学ぶ機会が
ありました。


その時知ったのが、食品添加物の及ぼす影響と、
平均的日本人が、一生の中で身体に取り入れる
食品添加物の量が300kgを超えることでした。


以来、食品添加物をとる事をできるだけ避け
てきました。


そのせいか、すこぶる健康ですし、年齢より
若く見られることが少なくありません。





■つぎに30代の頃、稲盛和夫や、大谷翔平が
影響を受けた中村天風の説く天風哲学を学び
ました。


天風は、言葉は心の状態を左右する重要な要素で
ある。


そして、積極的な言葉を使うことは、心を前向き
に保ち、人生をより良い方向に導くことができる。


逆に、消極的な言葉や感情は潜在意識に悪影響を
与えるとし、潜在意識を清らかに保つためには、
否定的な言葉を極力使わないようにすることが
重要と強く説いています。


よって、身体には食品添加物などの良くないもの
を取り入れることを避け、


心には、積極的言葉が満ち溢れるよう意識して
習慣化してきました。





■ちなみに、学術論文の検索サイトである
Google Scholarで「言葉」「潜在意識」「影響」
のキーワードを入れて調べてみると17,900件の
論文がヒットします。


「言葉」や「心」というと、疑わしいと感じる方
もいるかもしれませんが、現在では、しっかりと
科学的に解明されています。






■言葉と経営について考えてみますと、
経営理念の唱和にはじまり、アンケート調査や
研修の実施など、業績堅調な会社ほど「言葉」を
大切にしている会社が多いように感じます。


以前、訪問させていただいた岐阜県の
電設資材メーカー「未来工業」は、以下の特色を
持つ会社です。


・半世紀以上、黒字経営

・年間休日が約140日

・定年70歳。給与水準は60歳レベルを維持

・65歳時の平均年収は約700万円

・全員が正社員

・一日の労働時間は7時間15分

・残業もノルマもなし

・海外への社員旅行を5年ごとに実施

・数億円の旅行旅費は全額会社が負担

・育児休暇3年までOK





■この厚待遇を可能にしている源泉は、高い
粗利益率です。


高い粗利益率の理由は、同社の提案制度です。
それら提案から、約3千件の特許、実用新案、
意匠登録が取得されています。


訪問した際にお聞きしたデータでは、
社員一人当たり、年間19件の提案がされて
いました。





■では、なぜ、そのような良質な提案が数多く
なされているのかと言うと、同社の社内では至る
ところに「常に考える」という言葉が掲示されて
いるのです。



「常に考える」「常に考える」「常に考える」・・・
これだけ「常に考える」という言葉を浴びている
同社の社員さんは、仕事以外の時間も、
寝ても覚めても、仕事のことを「考えて」
いることでしょう。



以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆

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言葉は運命を変える力を持っている
中村天風(実業家・思想家1876~1968年)
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