「人件費は会社の目的」




■先週は、2社の中期経営計画策定合宿を行い
ました。


その中の1社、2代目30代専務と合宿に向けて
事前打ち合わせをした際の話です。


中期経営計画(以下、中計)の骨子をどうするか
の会話の中で、彼が言ったのは


『給料を上げてやりたいんです。』

でした。


『それにしましょう!』


ということで、高い給料を獲得するためを
中計の骨子の一つに掲げた合宿は、非常に
熱のこもったいい合宿になりました。





■筆者が、上場企業の経営に携わっていた時に
使用した指標に<労働分配率>があります。


ご存じの方も多いと思いますが、労働分配率とは

労働分配率=人件費÷粗利益額

であらわします。


この労働分配率を経営に活用することで、
極めて良い影響と結果を得ることができます。





■ここから、その活用方法を共有します。


以下がA社(架空)の損益計算書です。


10億円の売上高で、営業利益は5千万円。


この場合、労働分配率は


労働分配率=人件費÷粗利益ですから

300,000÷600,000=50%
人件費  粗利益 


で労働分配率は50%です。





■経営計画を立てる際に労働分配率を決めます。
上記A社の場合、50%と設定します。


そして、経営者は

『最大の報酬を獲得しよう!』

と号令を発するのです。


そこで計画される内容は、経費削減などの
縮小均衡方向ではなく、売上と粗利益の増大に
向けた拡大発展方向になります。





■拡大発展方向で、計画された損益計算書が
以下です。


従前に比べ、売上高は10億円→11億円で
110%増。


営業利益5千万円→8千万円で
160%増。

その他販管費は固定費ですので同額です。

労働分配率は50%で変わっていません。


人件費は300,000千円→330,000千円と
10%アップです。


人件費アップの内容は、業績向上によって上昇
した粗利益から、あらかじめ設定してある
労働分配率にしたがって、賞与で還元します。





■労働分配率を経営で活用する際、肝心なことは、
管理会計を機能させて、損益状況を社員さんたち
と共有することです。


どういうことかと言いますと、現在の損益状況が
自分たちの給与にダイレクトに反映されることを
タイムリーに共有することで、社員さんたちの
モチベーションが上がり、仕事での創意工夫が
自発的になされ始めるのです。





■こうなってくると、経営者と社員さんたちの
目的・目標が合致し



「人件費は会社の目的」



であることが実感されます。


すなわち、人件費は経費ではなく、
会社と社員さんたちが「幸せ」になるための
ものであるということです。


以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆

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「汝の幸せは、他人の幸せによってつくれ。」
ヴォルテール(フランスの哲学者 1694~1778年)
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利益は手段



■今週は、顧問先の中期計画策定合宿などで
仙台に4泊となります。


昨日まで行っていた中期経営計画策定合宿は
30代~40代の経営幹部6名が参加し
1年以上先の、2025年6月から始まる計画作りに
着手しました。


この会社は、コロナ禍に過去最高業績をあげる
など着実な成長をし続けていますが、その要因の
一つに、常に先を見越して、先手先手と手を打つ
迅速性・先行管理があります。







■先週、顧問先の会長と話していた時に彼が
発した言葉です。


『春木さん、パーパスって何ですか?
パンパースというオムツなら知っていますが、
パーパス、パーパスと言われても、
私には全然わかりません』


思わず、『ぷっ』っと、
吹き出してしまいました。


この会長は、勉強熱心な方で、パーパス(目的)
の意味も当然ご存知なのですが、カタカナ言葉や
難解な経営用語が氾濫する昨今の風潮を揶揄して
発した言葉でした。





■パーパスに限らず、不測の事態や変化に対応
して、迅速かつ適切に対応できる能力をさす
『レジリエンス』


持続可能な社会や環境を実現するための取り組み
『サステナビリティ』等など


次から次と新しい言葉が生まれ、
そして、泡のように消えていきます。


しかし、わが国では『レジリエンス』も
『サステナビリティ』も『パーパス』同様、
その本質的考え方は、百年以上前から、
機能していました。





■会社の存在目的は、


世の中の役に立つため。


それが、しっかりと認識されずに


利益が目的、


あるいは、目的があいまいになっていることが


多くの悲劇や喜劇を巻き起こしています。





■次から次に出てくる経営用語に右往左往して
いるのは、会社の真の目的を理解せず仕事に
向き合っているからなのでしょう。


会社の目的が、利益を追求することと、
社員さんが認識していると、社員さんは
働くことに辛さを感じるようになります。


何のために仕事をしているのかを
しっかりと示さずにいる会社
しっかりと認識できずに働いている社員さん・・・


業績が芳しくない会社の大本はここにあります。





■日本の資本主義の父といわれ
現在も優秀企業として存在している500社余りの
会社を育てた渋沢栄一はその著書『論語と算盤』
で以下ように述べています。


<以下引用>

その富をなす根源は何かといえば、仁義道徳。
正しい道理の富でなければ、その富は完全に
永続することはできぬ。

ここにおいて論語と算盤というかけ離れたものを
一致せしめることが、今日の緊要の務めと自分は
考えているのである
<引用ここまで>


利益は目的ではなく
あくまでも手段。


百年以上前にその精神でつくった会社が
500社あまり存在していることが、その考えが
間違っていない何よりの証左であります。



以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆

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できるだけ多くの人にできるだけ多くの幸福を
与えるように行動するのが我々の義務である。

渋沢栄一(実業家 1840~1931年)
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中規模企業への脱皮



■先週、上場企業の社長と会食をしました。
会社は以前から知っていましたが、お会いする
のは、初めてです。


お会いした社長の会社業績は、ざっくりと把握
していましたが、会食後、改めてその業績を
確認しますと、その手堅さを痛感しました。


下表は、お会いした会社(A社)と、
同じビジネスモデルで、交わってはいませんが、
同じような商圏で、展開する上場企業B社の
業績比較です。


A社の営業利益率は、5%~15%の間で推移し
自己資本比率は、70%台後半から80%台後半へ
約10ポイント引き上げています。


一方、B社は5%前後だった営業利益率が
2016年から赤字転落し、その後も低迷を続けて
います。


それに伴い、自己資本比率は、以前60%前後
だったものが、一桁と凋落傾向を示しています。


今回、A社の社長にお会いして

『組織は99%トップで決まる』

という言葉を再認識した次第です。


(筆者作成)




■企業成長の伴走をしていますと、多くの会社が、
年商10億円を前に、足踏み状態になることが
あります。


これは、企業規模のステージがランクアップ
される際に、超えなければならない壁のよう
なもの(課題)があるからです。


実際、政府統計資料を見ましても、多くの業種で、
小規模企業の占める割合は80%台であることが
わかります。(下表 平成28年経済センサス)






■先に上げました年商10億円を超える課題と
して、市場規模や自社商品、マーケティングなど
種々ありますが、本欄では、比較的多く見られる
組織論の観点から情報共有します。



年商10億円の前で足踏み状態になる会社に
起きている共通現象として


・現場からの報告が迅速にあがらない

・報告があがっても正確性に乏しく、虚偽も見受けられる

・会社で決めたことの情報共有が不徹底

・課題対処が表層的でモグラ叩き状態

・よって、同じような問題が絶えない

・社員さんの離職率が高い(5%以上)

・業務の進め方のバラツキが激しい

・現場との深い対話がなされていない

・役員が管理職を飛び越し、直接、一般職に報告を求める

・役員が管理職の仕事を手放せない等など





■このような現象がどうして起きるかといいます
と、創業から年商10億円の手前までの成功体験
があるからです。


社長はじめ役員が優秀だったから、創業から
年商10億円の手前まで会社を成長させることが
できました。


そこで、社員さんたちに一定の教育などの働き
かけをすると、創業メンバーである自分たちと
同じ価値観や考え方を持ち、仕事の仕方ができる
と、錯覚してしまうのです。



社長はじめ、もともと優秀な創業メンバーが、
必死になって取り組んできた今までと、ある程度
の規模になって入ってきた、雇われ人(社員さん)
が、同じようであること自体が不自然です。





■したがって、社長はじめ役員は、企業規模の
ステージをランクアップさせるために、

自分たちのモノの考え方や、やり方を
ギアチェンジするぞ!

という確かな自覚と決意が必要になります。



しかし、理屈ではわかっていても、今までの
慣習や、手放すことの寂しさ、あるいは、
自分たちが、新たに何をすればよいのかを
分からずに、今までと同じ言動を繰り返すのです。





■このような状態に対する有効な手段として


1,    役割分担の明確化
社長・役員・管理者の役割分担を明確化する
特に役員は、業務において、減らすこと、
止めることを決める


2,    情報共有の仕組み化
日・週・月で共有すべき情報を書き出し、整理
して共有方法を決め、それがなされているか確認
し続ける


3,    会議体の健全運営
以前の小欄でもご紹介しましたが、今までは
阿吽(あうん)の呼吸で意思疎通が図れましたが、
人員増による組織拡大にともない、個人戦から
組織戦への転換が不可欠です。そのエンジンと
なるのが健全な会議体運営です

https://www.hibikorearata.co.jp/blog/everyday/entry-407.html


以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。

日々是新 春木清隆

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脱皮しない蛇は死ぬ。

人間も同じ。古い考えの皮をいつまでも被って
いれば、やがて内側から腐っていき、
成長する事ができないどころか、死んでしまう。
常に新しく生きていくために、私たちは考えを
新陳代謝させていかなくてはならない。

ニーチェ(ドイツの思想家 1844~1900年)
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インフレ対策粗案



■4月は毎年、新入社員研修で、飛び入り仕事が
増えます。

今週もスポット仕事で札幌に行って来ました。






■同じく先週、川崎市にある顧問先の新卒研修を
行い、近くの洋食屋さんでランチをいただいた時
に考えたことです。


過去、何度か利用させてもらっているこのお店は
中年のご夫婦が営まれています。


実直そうなご主人が、丁寧に料理をつくり、奥様
がテキパキと接客をされ、いつ利用しても地元の
ご婦人たちや、お勤めの人で賑わっています。


こちらのお店のランチメニューは以下の写真です。






■このメニューを価格構成グラフであらわしたものが
下のグラフ(青線)です。


※分かりやすくするために、対策後は
1,480円商品を1,500円に組み入れています。



1,200円の商品が3つ、1,500円と2,000円の
商品が、それぞれ1つずつ、というのが、現状
です。


諸物価があがる中、このお店の経営をより良く
するために、食事をしながら考えた施策が、
新商品の投入です。(単なる妄想でもあります)


他業種でもご参考になるかと思い、共有させて
いただきます。





■話を単純にするために、現状の売上は
1,200円のランチを50個販売していると
仮定します。


原価率は30%とし、粗利益額は、1日で
18,000円、1ヶ月25日稼働で45万円。
1年12ヶ月で540万円とします。





■インフレ対策として、ここに1,480円の
ランチを投入します。


原価率は既存商品と同じ30%。
客数は変わらず、1,200円の商品が38個
1,480円の商品が12個売れた場合
粗利益額は、年間302,400円の増加に
なります。(下表)


この粗利益額増は、固定費は変わりませんので
純然たる利益(キャッシュ)増になります。






■インフレ対策としての施策を考える場合、
まず最初に考えることは、お客さまの都合です。


今回の打ち手は、従来の商品群に1品加えるので
お客さまの不利益は生じません。


次に大切なことは、投入する商品は、お客さまに
とって、魅力的なものにすることです。


それは、従来の5品目に比べて、圧倒的な
お値打ち感を打ち出すことでもあります。





■このお店の場合、先のメニューにあるように
ランチビールやランチワインもあり、主婦を
主体とした女性客も多いので、新たに投入する
1,480円商品に彩り豊かな前菜系のアイテムを
付加することは、有力なアイディアの一つです。



ご存知のように、飲食店の場合、ディナータイム
の時間帯はアルコールが注文され、客単価が、
高くなるので、魅力的な前菜の提供は、近隣主婦
層だけでなく、ランチで利用している勤め人の
ディナータイム誘導にもつながります。



そうすると、先ほど試算した年間約30万円の
利益増は、その2倍3倍の実現にむけた打ち手
にもなるのです。





■今回は、インフレ対策として、飲食店を事例に
ご紹介しました。


このほか、法人営業を主体とした製造業や、
客単価が固定されがちな介護事業や調剤薬局
などは、別の視点も必要ですが、


大切なことは、お客さまの視点・感覚・立場から
考え抜いて、挑戦を繰り返すことです。


以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。

日々是新 春木清隆

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「我々は何を売りたいか」ではなく、
「顧客は何を買いたいか」を問う。

ピーター・ドラッカー
(経営学者 1909〜2005年)
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商売は人よろこばせごっこ



■先週は、友だちと3人で佐賀県〜福岡県を
旅してきました。


今回のお目当ての一つは、佐賀県の御船山楽園に
あるホテルです。


御船山楽園は、佐賀県武雄市の象徴ともいわれ、
江戸時代末期に鍋島家によって、壮大な庭園が
造られました。




■庭園の中にあるホテルは、予約が取れない宿
として有名です。


その理由は、15万坪の庭園と古い建物を活かした
チームラボ制作のアート作品、ならびに、
2019年にクラウドファウンディングを活用して
作った、非常に魅力的なサウナ温泉の施設が
あることです。


首都圏から4時間以上かかる厳しい立地の中、
低投資で価値を上げる良い事例を体験できました。







■同じく先週、仕事で地方都市駅前の書店を
利用した際の話です。


広域で店舗展開するこの書店で、本を買い、
会計をしようとすると、有人会計レジが3つ、
セルフ会計レジが3つありました。


有人会計レジは1つ稼働していましたが、
そのスグ後ろで5人のスタッフが話しています。
レジに並んだ私は10秒ほど待ちましたが、
セルフ会計で済ませました。




■この会社は、効率化のためにセルフ会計の設備
投資をしたと思いますが、働く人への投資
(働きかけ)がなされていないのか、先述のような
状況になったのでしょう。


このような事例は、この会社に限ったことでなく、
企業規模の大小を問わず、あらゆる業種で、
(経営者が無自覚のうちに)起きている事象です。


慢性的かつ構造的人手不足に対応し、戦略として
の設備投資は理解できます。


しかし、アメリカ流の経営術を使うあまり、
机上の利益計算を重視して、経営判断している
もではないかと思います。


すなわち、経営者は


利益重視~自社主体思考〜現場弱体化〜現場での顧客無視


の状態を想像できていないのではないでしょうか?





■書店のビジネス書のコーナーには、
いかに稼ぐか、いかに儲けるかの類の本は
数多くありますが、


あえて、ビジネスと言わずに、本来の商売とは、
自分や自分の大切な人が、お客さまだったら、
どんな商売の仕方がいいのかを考え、
実践し続けることだと思います。


それは、特別で、難しいことでありません。





■例えば、チェーンレストランで近ごろ増えている
お客さまが、卓上のタブレットを使って注文する
テーブルオーダーシステム。


このお店に、私たちの大切な親世代の方がお見え
になったら、さりげなく、その方のご注文を
お手伝いさせていただく・・・。




■商売とは、本来、人と人とが心を通わせる行為。
大手ネット通販でも、お客さま一人ひとりに
合わせたコミュニケーションを採ろうと懸命に
努力しています。


私たち中小企業は、お客さまに目線を合わせ
お金やシクミでは買えない人間性を発揮して
お客さまのお役に立つことが、自社の末永い
繁栄につながるものと確信します。


以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。

日々是新 春木清隆

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人生は
よろこばせごっこ

(漫画家アンパンマン作者 1919~2013年)
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