あなたの会社は何で世界一になりますか
■先週は金曜日まで仕事をし、土曜日は充電日
で、日曜日は宮城県の顧問先を訪問し、大学生
の息子とともに現場調査を行いました。
仕事の後には息子と食事をしながらゆっくり話
すことができ、かけがえのない、幸せなひとと
きでした。
今回は、今月初旬に奈良を訪問した主目的であ
る会社について共有します。
■その会社は、奈良県田原本町(たわらもとち
ょう)にある1689年創業の醤油蔵
「田原本マルト醤油」。
18代目当主の木村浩幸さんから直接お話を伺い
ました。
この蔵は、奈良盆地のほぼ中央に位置し、東に
大和川、中央に寺川、西に飛鳥川が流れ、弥生
の昔から豊かな農地が広がっている土地にあり
ます。
マルト醤油は創業以来、地元産の原材料にこだ
わった天然醸造醤油を造り続けてきました。
丁寧に仕込まれた風味豊かな醤油は皇室にも納
められ、最盛期には県外にも広く出荷されてい
ました。
しかし、第二次世界大戦後の食糧難により原料
の大豆や小麦の確保が困難となります。代替品
では納得のいく品質が造れないとの判断から
17代当主は約260年続いた醤油づくりにやむ
なく幕を下ろしました。
■閉業から約70年後。
「260年間、造りつづけた醤油とはどんなもの
だったのだろう」
この蔵はこの問いを原点に、18代蔵元当主木村
さんによって再興されることになります。
会社員を辞め、地元に戻った木村さん。
醸造蔵をはじめとする建物や江戸時代から引き
継いできた道具類などは、ほぼ閉業当時のまま
残されていました。
蔵の中から、醸造のヒントなども記された古文
書を発見します。
そして、何より幸いだったのは、かつて醸造蔵
だった建物の天井に、300年以上も蔵つき酵母
が生きていたことです。
歴史・技術・微生物。
すべてを手がかりに製法を再構築し、約10年の
歳月をかけて天然醸造醤油を復活。創業330年
の歴史を現代につなぎ直しました。
■現在、この蔵には世界中の一流レストランの
シェフたちが訪れます。
彼らが評価しているのは「味」だけではありま
せん。歴史、思想、覚悟、そして物語です。
木村さんのお話から、私たち中小企業経営にも
活かせる多くの示唆を得ました。
ここで、前回ご紹介した
『ビジョナリー・カンパニー2』の
「ハリネズミの法則」と重ねて整理してみます。
【世界一になれること】
同社が手がけるのは、日本市場で約1%前後と
いわれる木桶仕込みの醤油です。市場は小さい
ものの、高い専門性と付加価値によって世界を
顧客としています。
例えば、飲食店の場合、「地域一番店」を目指
すのも世界一につながります。
【経済的に回ること】
キーワードは「高単価」「少量生産」「ファン
顧客」「ブランド価値」「文化価値」です。
量の拡大ではなく、利益率と価値の最大化を重
視した経営です。
【情熱を持てること】
会社を辞めてから約10年間、売上保証なし。
成功保証なし。
自分が木村さんの立場だったら、やり続けるこ
とができただろうか・・・。
先祖伝来の醤油を復活させ、事業として成立さ
せた最大の原動力は「情熱」であったと受けと
めています。
■今回の訪問で実感したのは、企業の競争力の
源泉は「戦略」よりも「覚悟」にあるというこ
とです。
今回、現地を訪ね、ご本人とお会いして、一番
強く感じたことは彼の「情熱」でした。
私たちは日ごろ、ネット情報などを参考に、表
層的で、短期的な損得で判断しがちです。
しかし本当に強い会社は、「何を守り」「何を
捨て」「何に人生をかけるか」が明確です。
あなたの会社の存在理由は何ですか。
本当に守りたい価値は何ですか。
そして、そのためにどこまで覚悟できますか。
現場で一次情報に触れ、改めて自分自身に問い
を突きつけられた訪問でした。
以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
今日も皆さまにとって、
最良の一日になりますように。
日々是新 春木清隆
―――――――――――――――――――――
なぜ生きるかを知る者は、どんな困難にも耐えられる。
(フリードリヒ・ニーチェ ドイツの思想家 1844~1900年)
―――――――――――――――――――――
