ブログ
日常

「誇り」は、経営の力になる

■先週、万年筆のインクを新しいものに替えま
した。


これまで使っていたインクの使い始めを確認す
ると、「2021年11月13日」と記されていまし
た。およそ5年ぶりの交換です。


万年筆を使うのは、基本的に自宅で日記を書く
時だけです。新しいインクを使い始めたワクワ
ク感と、日記を30年近く続けてきていること
に、少し誇らしい気持ちになりました。


今回は、同じく先週の金曜・土曜に行った
3代目経営者との合宿を通じて考えたことを
共有します。






■合宿を行ったのは、首都圏で総合施設管理業
を営む会社です。創業60年以上の社歴で、従業
員は900人を超えます。


今回の合宿の目的は、来期から社長に就任する
3代目経営者の自社経営にかんする解像度を上
げることです。


多忙な日常からいったん離れ、湘南の海と自然
に囲まれた環境の中で、2日間、1対1の対話
を重ねました。


対話と内省を通じて、自分でも十分に気づいて
いなかった価値観や強み、本当に大切にしたい
ことを掘り下げていく。


そして、経営者として、また一人の人間として
これから進む方向を示す「羅針盤」を見いだす
ことが、この合宿の大きな目的です。





■2日間、いろいろなテーマで対話しました。
その中から今回は、「経営理念」について取り上
げます。


3代目経営者(以下、彼)が掲げた理念のキー
ワードは「誇り」と「健康」でした。


対話を重ねる中で明らかになったのは、彼の考
える「誇り」は、単に社員が気分よく働けると
いう意味ではないことです。


彼が考える「誇り高き仕事」とは、たとえば次
のようなものでした。



・他社には簡単に真似できない仕事

・お客様の期待を上回る仕事

・自分の仕事を好きだと言える状態

・家族に自分の仕事を自慢できる状態

・社名を堂々と掲げて働ける仕事

・周囲や業界に良い影響を与える仕事



こうして言葉にしてみると、「誇り」は抽象的
な精神論ではありません。


この会社が今後、「誇り高き仕事を増やす」こ
とを経営の軸に据えることは、極めて理にか
なっていると感じました。





■たとえば、「誇り高き仕事」を経営戦略と位
置づけ、「誇り高き仕事比率」、「誇り高き現
場比率」などをKPI(重要な経営指標)として
設定します。


その現状値をつかみ、目標値を定め、継続的に
改善していけば、次のような好循環を生み出す
ことができます。



誇り高き仕事
(他社に真似できない)

お客さまからの評価が高まる
(選ばれ、指名される)

価格決定力が高まる
(適正な対価をいただける)

粗利益の増加
(安定した経営)

待遇や職場環境が向上する
(社員さんの満足度が高まる)

良い人財が集まり、定着する

さらに誇り高き仕事へ


この循環がつくられれば、
「高付加価値・高粗利・高待遇・高定着」
という、会社と社員さん双方にとって望ましい
経営につながります。


つまり「誇り」は単なる精神論ではなく、経済
合理性を持った経営理念になり得ることが確認
できたのです。






■これまでの経験から、中小企業の経営理念は
頭で「考えて作る」というよりも、経営者の中
にすでにあるものを探求し、言葉にしていくこ
とが大切だと感じています。


経営の教科書で紹介されているような、フレー
ムワークを使って理念を導き出す方法や、
「社会への貢献」、「持続的成長」、「顧客
第一」などの言葉も間違ってはいません。


しかし、どれほど整った言葉であっても、経営
者自身の内面と結びついていなければ、苦境や
迷いの中で人を支える力にはなりにくいもので
す。


一方、経営者が自分の歩みや原体験を振り返り
心の底から紡ぎ出した言葉には、固有の力が宿
ります。


そして、その言葉は社員さんにも伝わり、会社
全体の判断や行動を導くものになっていきます。





■まず、「心」から理念を紡ぎ出す。


その理念を、戦略、KPI、マネジメントサイ
クルといった「科学」を用いて、日々の経営
に落とし込む。

これが、筆者の提唱する

「経営=心+科学」です。


心だけでは、理念が美しい言葉のままで終わ
ってしまうかもしれません。


一方、科学だけでは、数字や効率が目的とな
り、人や会社が進むべき方向を見失うことが
あります。


心が方向を定め、科学が実現する力となる。


その両方がそろって初めて、理念は経営の現場
で生き始めます。

たとえば、

「この仕事を受けるべきか」
「この人を役員にするべきか」
「利益が出ても、この仕事を続けるのか」
「社員に何を求めるのか」

こうした正解のない難しい局面で、理念は経営
判断の物差しになります。





■今回生まれた「誇り高き仕事を増やす」とい
う言葉は、すでに抽象的な理想を超え、経営の
方向を定めるところまで来ています。


理念が日々の仕事の選択や経営判断につながっ
たとき、初めて理念は「掲げる言葉」から
「経営を動かす力」になるのだと思います。


3代目経営者が、自らの理念をもとに、これか
ら会社にどのような歴史を刻んでいくのか。
その歩みに、引き続き伴走していきたいと思い
ます。



以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。


今日も皆さまにとって、最良の一日になりますように。



日々是新 春木清隆

―――――――――――――――――――――
「自分たちの仕事は顧客や社会を幸せにしている」
という誇りを社員が持っていなければ、
その会社はほんまもんの商品やサービスを生み
出せないと思うのです

堀場雅夫(堀場製作所創業者 1924~2015年)
―――――――――――――――――――――


Copyright(c) hibikorearata All rights reserved.