朝7時のバス停で、頭を下げる人たち
■今回は、10月15日の日本経済新聞夕刊
「私のリーダー論」で紹介されていた、
エコミット(鹿児島県薩摩川内市)のCEO、
川野輝之さんの記事を読んで考えたことを共有
してみたいと思います。
川野さんは42歳。2007年、奥さまの故郷であ
る鹿児島で会社を立ち上げました。
不要になった服を回収し、選別して、次の使い
手や資源へとつなぐ事業です。
■記事ではこのような場面が紹介されていまし
た。
<以下引用>
朝7時台。東京都内のあるバス停で、数人の男
女が一人の人物を待っています。
その人がバスを乗り換えるために降りてくると
一同は駆け寄り、頭を下げてこう頼みました。
「どうか、うちの会社に来てください」。待っ
ていたのは、ある会社の執行役員全員です。
<引用以上>
記事を読みながら、おもわず「うーん」と唸っ
てしまいました。
『ビジョナリー・カンパニー2』の有名な一節
を、ここまで徹底してやっている会社があった
からです。
『ビジョナリー・カンパニー2』では、偉大な
企業へ飛躍した会社に共通する特徴として、
「最初に人を選び、その後に目標を選ぶ」こと
を挙げています。
まず、ふさわしい人をバスに乗せ、ふさわしい
席に座ってもらう。どこへ向かうかを決めるの
は、その後だ、と言うのです。
この本は、著者ジム・コリンズと研究チームが
5年の歳月をかけてまとめたものです。1,435社
の中から、15年にわたって市場平均の3倍以上
の業績を上げた「飛躍企業」11社を選び出し、
同じ条件にありながら飛躍できなかった企業と
比べて、膨大な記事やインタビュー、財務デー
タを分析しました。
この本を読み、この言葉を知っている人はいま
す。しかし、これはと思う人を口説くために、
鹿児島から東京へ飛び、早朝バス停で声をかけ
る。しかも執行役員総出で。
川野さんはこう語っています。
「私のミッションの半分は採用だと思うくらい
重視しています」
■川野さんは自社の過去をこのように振り返っ
ています。
「数年前までの当社の組織は文鎮型。創業者の
私がすべてを把握し、決めてきました」
株主も社員も増え、念願だったタイへの進出も
決まった。社長に聞かないと何も分からない会
社のままでは、もう前に進めない。
そこで探したのが、「万が一、私に何かあっても
代表を任せられるような人材」でした。
そして採用にあたって重視したのは、
「自分より優れていること」だったそうです。
経営者にとって、これは簡単なことではありま
せん。自分より優れた人を迎え入れることは、
自分の居場所を譲る準備をすることでもあるか
らです。
■筆者も年商3億円の会社を9年間で株式公開
した経験から、採用は会社成長の非常に大きな
原動力になることは、身を持って体験していま
す。
当時、社員数は数十名の会社でしたが、採用活
動は、首都圏はもとより、仙台・京都・大阪・
福岡と現地まで足を運び、価値観が合う、優秀
な人たちと直接お会いしました。
お会いした方の多くは、テレビCMでおなじみ
の有名企業との採用が進行中、もしくは、すで
に内定を獲得したりしている方々ばかり。そん
な中で筆者から差し出せるものは、熱意だけで
した。
そうして仲間になってくれた人たちがいたか
らこそ、株式公開にたどり着けたのだと思っ
ています。
■もう一つ、心に残ったことがあります。川
野さんが、いまも鹿児島で暮らしていること
です。
休日には子どもや友人と釣りに出かけ、釣果
を記録して、海の状況や気象データとの関係
を分析しています。
地域に根を張り、家族や友人との時間を楽しみ
ながら、データを通して物事を探究する。
その暮らしぶりに、「心と科学」が自然に結び
ついているように感じました。
■そんな川野さんが率いる会社の役員の方々が
迎えたい人に思いを伝えようと、朝7時の東京
のバス停に並んでいたのです。
「うちは小さいから」
「地方だから、いい人が来ない」
という声をよく耳にします。
会社の規模や場所が、採用に影響することはあ
るでしょう。
それでもこのエピソードから、人の心を動かす
力は、こうした志と熱意から生まれるのではな
いかと考えた次第です。
以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今日も皆さまにとって、最良の一日になりますように。
日々是新 春木清隆
―――――――――――――――――――――
至誠(しせい)にして動かざる者は、
未だ之(これ)有らざるなり
まごころを尽くして真剣に行動すれば、
人の心は必ず動かされる。
もし相手の心が動かないのであれば、
それは自分の誠意がまだ足りないのだという
こと。
孟子(思想家 紀元前372~290年)
―――――――――――――――――――――
