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「信じて任せる」事業継承──年商100億円企業の節目に立ち会って

■昨日(5月27日)は2013年1月から、
顧問をしている会社の第40期社員総会に
参加してきました。


この会社は、兄と弟、そしてそのお母さまが
力を合わせて立ち上げた焼肉店から始まりました。


途中、BSE問題や新型コロナウイルス感染拡大
などの影響といった幾度もの困難を乗り越え、
ついに昨年、年商100億円という大きな節目を
達成。今も堅実に成長を続けています。





■今回、創業者の兄が相談役になり、弟が会長に、
そして兄の息子が社長、弟の息子が専務に、その
30代の2人を支える現場叩き上げの2人が常務と
いう、新たな役員体制になります。


この世代交代を通じて、ひとつの企業がどのよう
にして未来へとバトンをつないでいくのか、その
重要な一端を見せていただいた気がしました。
今回はその概要を共有します。





■現在、日本にはおよそ400万社の企業が
存在しますが、上場企業はそのうちわずか0.01%、
約4,000社に過ぎません。


その上場企業の中でも、年商100億円未満の
企業は全体の約3割(1,132社)。


つまり、非上場でありながら、創業から一代で
年商100億円を超える規模まで成長する企業は、
非常に珍しい存在であることを、あらためて実感
しました。





■この会社が、ここまで成長し続けている要因は
多々ありますが、その一つは今回、新役員体制を
担う4人へのスムーズな権限委譲があります。


それを顕著に感じられるようになったのは、
若手経営陣によって中期経営計画を策定した
2018年頃からです。


この取り組みを通じて、彼らは「現場の実務」
から「経営者の視点」へと視座を引き上げ、
業界や社会全体を俯瞰する力を身につけていった
のです。


さらに、彼らは具体的な成長戦略を立案・提案し、
その実行に責任を持つという貴重な経験を積んで
いきました。





■もちろん、その過程でベテランの経営陣には
口を出したくなる場面もあったことでしょう。


しかし、創業者世代はその思いをあえて飲み込み、
若手を信じて任せるという選択をされました。


「会長業はガマン業」と言われますが、
「俺の時代は…」を封印し、未来を信じてバトン
を渡すという決断は、簡単なようで非常に難しい
ものです。





■この会社の成長の礎(いしずえ)になっている
のは、創業者兄弟の生き方と仕事に対する真摯な
姿勢があります。

そしてそれは、経営理念として明文化され、
社員一人ひとりの心と行動の軸になっています。


世の中には多くの会社が理念を掲げていますが、
ここまで愚直に理念を実践されている例を私は
ほとんど知りません。


それは、コンサルや教科書が提供する表面だけの
カタカナ言葉である
「PMVV(Philosophy、Mission、Vision、Value)」
などとは一線を画した、泥臭く、地に足のついた
本物の理念です。





■総会のあとは懇親会が開かれ、創業者兄弟から
社員や取引先に向けたメッセージが伝えられまし
た。


会場には自然と涙を流す方々が多くいらっしゃり、
それは、誰もが創業者の生き方そのものを尊敬し、
心から共感している証だと感じました。



最後は、「100年企業」を目指すという会社の
明確な目標に向けて、それぞれが決意を新たに
する静かな熱気に包まれて、会は幕を閉じました。




この会社の皆さんと長くご一緒できていることに、
深い意味と学びを感じています。

かかわる一人として責任と誇りを持ちながら、
これからもその歩みに刺激を受けつつ、

共に学び、共に喜びながら仕事に取り組んで
いきたいと思います。



以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆


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「任せることは、手放すことではなく、
共に成長することだ。」
 
安藤忠雄(建築家 1941年~)
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