「人を大切にする経営」と高収益基盤 〜持続的な成長への道〜
■先週は、月曜日~金曜日が顧問先での仕事で、
土曜日はセミナーを受講してきました。
まだまだ暑い日が続いていますが、暦の上ではす
でに立秋(8月8日)を迎えました。
朝、いつものジョギングコースを走っていると、
見なれた田んぼの稲に実がなりはじめています。
ついこのあいだ、田植えをしたばかりだと思って
いたので、時の流れの速さに驚くと同時に、太陽
や大地、雨、そして農家の方々への感謝の気持ち
が湧いてきました。

■先週、県庁所在地にある製造業の顧問先の専務
が、『春木さん、政策金融公庫がこんな資料を持
ってきてくれました。』といって、その会社の経
営診断結果を見せてくれました。
この会社は自己資本比率が80%を超える超健全
な財務体質の会社ですが、定期的に、決算資料を
公庫に持参しているのです。
その資料をみますと、過去10年間の会社の財務
診断が詳細になされています。
総評として「経営診断のスコアは上位2%以内」
と記されていました。上位2%以内ということは
偏差値に置きかえると、70以上ということにな
り、日本全国でも最上位クラスに位置する優良企
業と評価されていることになります。

そのような超優良な会社ですが、そこから、専務
との会話で、社員さんたちにさらなる好待遇をし
続け、会社を発展させ続けるための施策について
意見交換をしました。
■この会社は、「人を大切にする経営」を標榜し
実践し続けている会社です。
このような素晴らしい結果を目の当たりにすると
「人を大切にする経営」という考え方が、経営に
おいていかに重要であるかを改めて実感します。
一方で、「人を大切にする経営」というと、社員
さんへの配慮や待遇にのみ焦点を当て、「利益を
生み出し続けること」が軽視されがちなケースも
少なくありません。
人を大切にすることはもちろん重要ですが、それ
を継続するためには、その原資となる利益を生み
出し続ける収益力の向上が必要不可欠なのです。
■「人を大切にする経営」を実践する会社、数百
社にうかがい直接お話をおききしたこと。また、
多くの事例研究、さらには筆者自身の経験をつう
じて、「人を大切にする経営」を実践し続けてい
る会社は、例外なく、高収益基盤をもっています。
高収益基盤の内容は、業種や立地、取り扱い品目
などで異なります。
たとえば、5軒のラーメン屋が並ぶ商店街を想像
してみてください。
「人を大切にする経営」を持続できるのは、その
中で間違いなく一番繁盛しているお店です。
いくら従業員を大切にしたいと思っても、お店が
儲かっていなければ、十分な給料や働きやすい環
境を提供し続けることは難しいでしょう。
つまり、競争に勝ち、利益を上げられることが、
「人を大切にする経営」の土台となるのです。
■実際、筆者が経営していた会社では、その会社
の商圏を約50に分け、毎週、競争相手15社程
度とのシェアを測定し、毎月、その対策のマネジ
メントサイクルを回していました。
新規参入商圏ではシェア下位から始まりますが、
7~9割の商圏では、シェア1位か2位を占めて
いました。
商圏ごとにエリア別損益を毎月作っていましたが
シェア上位のエリアの営業利益率は、低いエリア
に比べ、3倍以上の高い利益率を稼ぎ出していま
した。
また、シェア下位の競争相手は価格訴求、つまり
値引きが中心の打ち手であったため、調査機関か
らその会社の経営内容を入手し確認しても、厳し
い経営状況であることがわかりました。
■私たち中小企業経営にかかわる者にとって、
高収益基盤を確立すること。
すなわち、競合よりも高い利益率の製品やサービ
スを持ち、お客様から選ばれ続けることは極めて
重要です。それは、下表2025年度の倒産状況を
見ても、その理由は明らかです。
下表にあるように、
倒産要因のトップは「販売不振」で全体の74%を
占めています。次の「既往のしわよせ」にも、取
引先の倒産などが含まれていると推測できるため
やはり「販売不振」から脱却することが最大の課
題なのです。

■先ほどのラーメン屋の例に戻って考えてみてく
ださい。あなたの会社は、5軒の中で何番目に繁
盛していますか?
高収益基盤を作るための切り口は、商圏別、製品
(商品)別、個店別、顧客年齢層別、販売チャネ
ル別、価格帯別・・・。
切り口は自在に設定できます。
「一番になる」と決意し、それを実践し続ける
経営者が一人でも増えることが、この国の明るい
未来につながると信じています。
以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。
日々是新 春木清隆
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「ビジネスにおける成功は、理念と利益という
二つの車輪が同じ方向を向いて歩く。」
松下幸之助(日本の実業家/1894~1989年)
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