1,300冊を手放して、最後に残った5冊
■今月に入り、蔵書の一部を整理しました。
段ボールで34箱、約1,300冊。
長年手元に置いてきた本を、リサイクル業者
さんに引き取っていただきました。
当初は、ほぼすべて処分するつもりでした。
が、整理も終盤に差しかかった頃、
「段ボール1箱につき1冊だけ残そう」と思い
直し、最終的に5冊の本を手元に残しました。
今回は、その5冊について共有したいと思いま
す。
■残したのは、写真の5冊です。
並んでいる順番は、それぞれの本と出会った
時期の順でもあります。
振り返ってみると、そこには自分自身の仕事や
人生の歩みが重なっていました。
■1冊目は、邱永漢著『成功の法則』です。
1973年発行の本で、著者の邱永漢氏は台湾
生まれ。東京大学経済学部を卒業し、小説家、
実業家として活躍した人物です。
大学生の頃、古本屋で偶然手に取り、
華僑らしい自由で合理的な考え方に
共感して購入しました。
主な目次は
「始めること」と「やめないこと」
3年ダメならおやめなさい
一年先を考えよ
初めに「選択」ありき
常識に従うな
変化はすべてチャンスなり
インフレの犠牲になるな
といった言葉が並びます。
50年以上前に書かれた本ですが、変化の激しい
今の時代にも通じる考え方が数多くあります。
■2冊目は、松下幸之助著『社員心得帖』です。
1981年発行で、社会人1年目の時に購入しまし
た。
この本では、社員として働くことの意味や心構
えについて、新入社員、中堅社員、幹部社員と
いう、それぞれの立場に分けて説かれています。
たとえば、
「会社を信頼する」
「礼儀作法は潤滑油」
「健康管理も仕事のうち」
「日ごろの訓練がものをいう」
「『部下が悪い』のか」
「『私の責任です』」
「人を育てる要諦」
「部下のじゃまをしない」
社会人1年生の心得と、立場が変われば、求め
られる責任や役割も変わる。そのことを教えて
くれた一冊です。
松下幸之助氏の著書では、大学生の頃から読み
始めた『道をひらく』も、今なお、ほぼ毎夜読
み続けています。
■3冊目は、邑井操著『器量をつくる』です。
1986年発行で、私自身がリーダーとなり、
多くの課題に直面するようになった頃に手
に取った本です。
本書では、「器量」の「器」は才、「量」は
徳量・人徳を意味し、その両方を備えること
の大切さを説いています。
目次には、
「幹部とヒラの違いはどこにあるか」
「勉強はよい顔をつくるためにある」
「聡明な幹部はここが違う」
「幹部は利口に溺れてバカになるな」
「人物を観て、人物を目ざせ」
「今をおいて、未来はない」
「器量はこうしてつくられる」
といった言葉が並んでいます。
仕事ができるだけでは、よいリーダーにはなれ
ない。
能力を磨くと同時に、人としての器を大きく
していくことの大切さを、この本から学んだ
ように思います。
■4冊目は、堀紘一著『「心の時代」の企業
革新』です。
1993年発行で、実務の中で「経営とは何か」
を考えざるを得ない状況に置かれていた頃に
出会った本です。
著者の堀紘一氏は、東京大学法学部卒業後、
読売新聞、三菱商事を経て、ハーバード・ビ
ジネススクールでMBAを取得。その後、ボ
ストン コンサルティング グループの代表取
締役社長を務め、後にドリームインキュベー
タを創業しました。
本書には、
「トレードオフ思考への転換」
「同化から異質共存へ」
「選ぶ眼力と捨てる技術」
「効率主義から効果主義へ」
「『豊かさの哲学』の時代に」
といったテーマが取り上げられています。
その後、筆者が事業会社で経営に携わっていた
時、株式公開に向けた取り組みの中で、堀紘一
氏の会社とパートナーとして一緒に仕事をする
機会に恵まれました。
本を通じて考え方に触れた人物と、後に実際の
仕事でご一緒することになったのですから、
不思議なご縁を感じます。
■そして5冊目が『シルバー・バーチの霊訓』
です。
この本と出会ったのは1990年代。
「何のために仕事をするのか」
「何のために生きているのか」
そんな根源的な問いを自分自身に投げかける
ようになった時期でした。
この本には、
人が生きる目的は、人の役に立つ働きをすること。
知識や地位以上に、「どれだけ他者に尽くした
か」に価値があること。
苦しみや試練にも意味があること。
自分の考え、言葉、行為のすべてに責任が伴うこと。
そして、金が火によって精錬され、ダイヤモン
ドが磨かれて輝きを増すように、人間もまた試
練を通じて慈悲や強さを身につけていくこと。
そうした、人間の生き方についてのメッセージ
が記されています。
■こうして、約1,300冊の中から残した
5冊をあらためて眺めてみて、あること
に気づきました。
どの本も、単なる仕事の「やり方」を
教える本ではありません。
そこに書かれているのは、
「どう生きるか」
「どう働くか」
「どう人と向き合うか」という、
「あり方」や「考え方」についてです。
もちろん、これまで経営分析やマーケティング
財務、戦略など、「やり方」に関する本も数多
く読んできました。
それらをパソコンやスマートフォンの
「アプリ」にたとえるなら、その土台となる
OSが、その人自身の「あり方」なのだと思い
ます。
どれほど優れた知識やノウハウを身につけても
それを使う人のOSが整っていなければ、
十分に生かすことはできません。
■筆者は日頃、「経営=心+科学」とお伝え
しています。
「科学」とは、経営の知識や技術、仕組み、
数字など、いわば「やり方」です。
そして「心」とは、人としてのあり方や考え方
他者への思いやり、志といった、その人の土台
となるものです。
今回、長年集めてきた本を手放し、最後に残っ
た5冊を見て、私はずいぶん昔から「心」を磨
くことを大切にしてきたのだと、あらためて気
づかされました。
■本を整理することは、単にモノを減らすこと
ではなく、自分がこれまで何を大切にして生き
てきたのかを振り返る機会でもあるのかもしれ
ません。
1,300冊を手放して、残った5冊。
そこに残っていたのは、本そのものというより
これまでの人生で大切にしてきた「考え方」
だったように思います。
これからも「心」を磨き続けること。
そして、自分にできることで、一人でも多くの
人の役に立つこと。
5冊の本を前に、そんな思いをあらためて強く
した出来事でした。
以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
今日も皆さまにとって、
最良の一日になりますように。
日々是新 春木清隆
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成功する人間になろうとするより、
むしろ価値ある人間になろうとしなさい
アルベルト・アインシュタイン
(理論物理学者 1879~1955年)
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