ナンバー2は、誰に忠誠を尽くすのか
■普段、テレビはほとんど見ませんが、今年の
NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』は珍しくこれ
までの放送の8割ほどを録画で観ています。
主人公は豊臣秀吉の弟・秀長。ドラマを見てい
ると、秀吉が天下統一という大事業を成し遂げ
られた背景には、間違いなくこの秀長の存在が
あったのだと、改めて深く実感させられます。
随分前に読んだ堺屋太一著、『豊臣秀長 ある補
佐役の生涯』の内容を思い出しています。
今回は、この物語を通して考えた「強い組織に
おけるナンバー2のあり方」について共有して
みたいと思います。
■会社の規模にかかわらず、長く成長を続けて
いる組織には、例外なく優秀なナンバー2が
存在します。
筆者自身の経験からもナンバー2には大きく分
けて3つの大切な役割が求められると感じてい
ます。
1、現場を鍛え、実行力を高める役割
一つ目は、トップが描いたビジョンや方針を、
現場が実行できる形に「翻訳」する役割です。
トップがいくら立派な方針を示しても、それだ
けでは成果にはつながりません。現場の仕事や
具体的な行動にまで落とし込んで、初めて組織
は動き始めます。
同時に、現場から上がってくる「無責任な泣き
つき」や「甘い計画」を、そのままトップに届
けるのではなく、
「どうすれば実現できるのか」
「どうすれば利益につながるのか」
という視点から内容を磨き、実行可能な計画へ
と鍛え上げることも重要です。
現場の意見や要望を大切にしながらも、ただ流
されるのではなく、会社全体の利益という視点
から、時には厳しい規律を求める。
トップの意図と現場の実情をつなぎ、成果の出
る形に変えていくことが、ナンバー2の大切な
役割です。
2、組織をつなぎ、力を引き出す役割
二つ目は、トップと現場、あるいは部門と部門
をつなぎ、組織全体の力を引き出す役割です。
組織が大きくなればなるほど、立場や役割の違
いから、考え方のズレや摩擦が生まれます。
そこでナンバー2に求められるのは、双方に
「いい顔」をして調整することではありませ
ん。
会社の理念や目的を軸に、
「会社にとって何が一番良いのか」
という視点から、双方が納得できる着地点を
探すことです。
また、現場には、社長には直接伝えにくい意見
や問題もあります。
そうした声を受け止め、必要なものは経営に届
ける。反対に、トップの考えを現場が理解でき
る言葉に変えて伝える。
ナンバー2は、組織の中を流れる情報や感情の
「詰まり」を取り除き、人と組織の力を引き出
す存在でもあります。
3、トップに率直な意見を伝える役割
三つ目は、トップに対して「耳の痛いこと」を
言えることです。
会社のトップは、立場が上がるほど孤独に
なります。
周囲から率直な意見が入りにくくなり、気がつ
けば「裸の王様」になってしまう危険もありま
す。
だからこそナンバー2は、トップを尊重しなが
らも、必要な時には率直に意見を伝えなければ
なりません。
社長の思いや指示に無理があれば、感覚だけで
反対するのではなく、数字や事実、論理をもと
に現実的なリスクを示す。
逆に、社長が「間違いたくない」と決断を先送
りしている時には、適切な「問い」を投げかけ
覚悟と決断を促す。
単に「それは違います」と否定するのではなく
A案・B案と複数の選択肢を示しながら、より
良い意思決定へと導いていく。
そうした存在がいることで、経営陣や幹部にも
適度な緊張感が生まれ、組織が事なかれ主義や
保身に傾くことを防ぐことができます。
■ここまでナンバー2の役割について書いてき
ましたが、私は、これらの能力以上に大切なも
のがあると思っています。
それは、その人の「動機」です。
その人が何のために、その立場にいるのか。
判断の軸が「会社の存続と繁栄」にあるのか。
それとも「自分の立場や評価を守ること」にあ
るのか。
この違いは、時間が経つほど大きな差となって
表れます。
むしろ、能力が高くても動機が保身に向いてい
るナンバー2ほど、会社を内側から弱くしてし
まう危険があります。
だからこそ、優れたナンバー2は「社長に迎合
する人」でも、「現場に媚びる人」でもありま
せん。
時にはトップに厳しいことを言い、時には現場
にも厳しさを求める。
その判断の根底にあるのは、
「10年後も、この会社が健全に存続し、繁栄しているか」
という視点です。
トップ個人に忠誠を尽くすのではなく、
会社の理念と未来に忠誠を尽くす。
それこそが、優れたナンバー2に共通する
「心のあり方」ではないでしょうか。
『豊臣兄弟!』を観ながら、秀吉を支え続けた
秀長の姿を通して、強い組織に必要なナンバー
2のあり方について、改めて考えさせられた次
第です。
以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
今日も皆さまにとって、
最良の一日になりますように。
日々是新 春木清隆
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『俺は、一人では大した武将にはなれん。
どうせ補佐役なら兄のそれになり、
生涯主役になろうとは望まぬことだ』
堺屋太一著
歴史小説『豊臣秀長 ある補佐役の生涯』より
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