戦略とは、何をやらないかを決めること
■先月(7月)、顧問先の経営者数人と、
静岡市の鰻屋さんで、昼食をいただきました。
真夏の暑い日にもかかわらず、店の前には順番
を待つお客さまの列。その光景を見ながら、
「繁盛する店には、やはり理由がある」と改め
て感じました。
今回は、この鰻屋さんから考えたことを共有し
たいと思います。
■鰻屋さんのメニューは、基本的に5,000円
(税別)の「一本うなぎ定食」ひとつだけです。
白焼きや肝焼き、ビールなどの飲み物などもあ
りますが、来店した人は必ずこの「一本うなぎ
定食」を注文します。
客席数は約40席。焼き場もふくめ、4~5人の
女性スタッフで運営していました。
創業50年以上で家族経営をされているようで
す。
減価償却も済んだ店舗で、家族経営、そしてこ
の繁盛ぶり。ということでご一緒した経営者の
方々と損益試算をしてみました。
■前提条件を以下のようにすると
営業日数:25日
客単価:5,000円
1日客数:85人≒40席×3回転×70%
原価率:40%
営業日数は確実な数字で、客単価は最も低く見
積もった数字です。
客数と原価率も、店の混雑度合や、実際に食事
をした印象から、比較的保守的な数字を置いて
います。
そうすると、月次損益は下記のようになります。
■売上高から原価や水光熱費などの販管費を
引いた管理可能利益は531万円になります。
そこから仮定人件費率を30%として、
320万円を差し引いた額が、純利益211万円で、
売上高構成比20%となります。
この店を3家族で運営しているとすると、
一家族の年収は1,280万円となります。
そして、店舗全体では年間2,520万円の
キャッシュが積み上がっていくことになります。
■では、この見事な損益計算書を生み出してい
る理由は何でしょうか。
その根底にあるのは圧倒的な商品力です。
関西風の地焼きで、頭から尻尾まで一本丸ごと
香ばしく焼き上げる鰻。
その一口目の香ばしさ、圧倒的な食べ応え、
そして深い満足感。
「この店でしか味わえない」と思わせる価値が
あるからこそ、多くのお客さまが暑い中でも並
び、5,000円という価格を納得して支払ってい
るのだと感じました。
■ここに、私たちも一度立ち止まり、自社の
商品やサービスの本質的な強みについて、お客
さまの立場から、徹底的に考えてみるキッカケ
があるように思います。
よのなかを見渡すと、一見、効率の良さそうな
やり方についての情報があふれ返っています。
しかし、それらを模倣するだけで、業績が改善
できないことは皆さまご存知のとおりです。
また、経営の足腰に相当する、「商品・サービ
スの力」をおざなりにしたまま、目先の打ち手
をいろいろと試み、結果、どれも中途半端で、
経営者の成績表である損益計算書も凡庸な内容
になっている会社が少なくありません。
経営の土台は、やはり商品力です。
■もうひとつ、このお店から学べる点がありま
す。
それは、「何をやらないか」を明確に決めてい
ることです。
・鰻重や鰻丼には広げない
・宴会需要も追わない
・支払いも現金のみ
ターゲットを「本当に美味しい鰻を求めるお客
さま」に絞り、そのお客さまに最高の商品を届
けることに集中しています。
限られた経営資源を分散させず、強みに一点集
中する。
その積み重ねが、50年以上愛され続ける理由
なのだと思います。
■戦略とは、やることを増やすことではありま
せん。
より良い会社をつくるためには、限られた経営
資源を、最も価値を生み出す一点に集中させる
ことです。
「御社が今、本当にやめるべきことは何でしょうか。」
自社における「絶対的な味(強み)」とは何か
そして「手放すべき無駄」は何かを考える
きっかけとなれば幸いです。
以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
今日も皆さまにとって、
最良の一日になりますように。
日々是新 春木清隆
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戦略の本質は何をやらないかを決めること
マイケル・ポータ(経営学者 1947年~ )
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