■今回は久しぶりに読書メモを共有します。
著者はドン・キホーテの創業者、安田隆夫氏です。


ドン・キホーテは、創業以来三十四期連続で
増収増益を成し遂げ、売上二兆円の日本を代表
する企業です。


おなじように連続して成長し続けている会社に
ユニクロとニトリがあります。


3社の共通点は、それぞれ小売・洋服屋・家具屋
と、どこにでもある業種であること、そして、
オーナー経営者であること。


また、安田隆夫氏は岐阜県大垣市出身。
ユニクロは山口県宇部市、ニトリは北海道札幌市
という地方都市での創業など、私たち中小企業と
の共通点が見いだせます。


(出所:各社IR資料より筆者作成)


日本の上場企業数は、約4,000社。
その中で、20年以上増収し続けている会社は
全体の0.5%の20社程度。
その中にこの3社は入っています。





■ドン・キホーテという屋号で小売業を展開する
会社の正式名称は株式会社パン・パシフィック・
インターナショナルホールディングスです。
(英語名:Pan Pacific International Holdings Corporation)
以下PPIHと表記します。


この業界はかつて、ダイエー(現イオングループ)、
ユニー(現PPIH傘下)など総合スーパーが
全盛を誇っていました。


それら大手企業が、そろって業績を下げる中で、
なぜPPIHだけが三十四期連続で増収増益を続け
ているのか?


また、SBIホールディングスの北尾吉孝氏が、
「経営書として、人生の指南書として、常に傍に
置いておきたい」とコメントしていること。


本書からその基本的な考え方などを知りたく読み
始めました。








■『運』という題名のこの本を読んで印象に
残ったことを3つ記します。



まず第1は、「楽観主義」です。
安田氏は、困難な状況に直面しても前向きな姿勢
を保つことが重要だと強調しています。
創業初期に廃業寸前まで追い込まれた際も、
「危機はいわば成長痛」と捉え、悲観せずに前向
きな気持ちで乗り越えたエピソードが紹介されて
いました。

この根拠なき自信のような「楽観主義」は、
松下幸之助はじめ多くの成功者も唱えています。



次に「挑戦する」ことです。
安田氏は、数多くの新業態開発に取り組んでいま
す。主幹業態であるドン・キホーテや海外業態の
DON DON DONKIなど、現在ある15の業態は
100の挑戦があったから、逆を言うと8割以上の
失敗があったからだと述べています。

この挑戦する姿勢はユニクロの創業者である柳井
正氏の著書『1勝9敗』でも同じ考え方が紹介
されていました。



3つ目は、「経営理念」の大切さです。
安田氏は、企業理念集『源流』を発行しています。
ここで「経営理念」を、未来永劫にわたり普遍的
かつ、絶対的な価値観として全従業員・役員に明
文化して示し、遵守を徹底しています。
そして、組織運営や人財育成、事業判断の根幹と
して機能させています。


「経営理念」の重要性については、ニトリの
創業者である似鳥昭雄氏はじめ、多くの経営者や
経営学者がその実践の重要度を唱えており、改め
て、再確認できました。


本のタイトルは『運』ですが、その内容は、
いわゆる「運まかせ」や「一か八かの奇抜な方法」
に頼るものではありません。

むしろ、経営の神様・松下幸之助や、古今東西の
思想家たちが説いてきた原理原則と深く通じる、
非常に本質的な内容でした。





■最後に本の中で印象深い言葉を列記します。



・運を良くする行為、悪くする行為は必ずある

・不運の時は下手に動かず、チャンスが巡ってき
たら一点突破でがむしゃらに突き進む

・もがき苦しみ、唸りながら考え抜いた先にしか
活路はない

・挑戦をやめた瞬間に運は落ちる

・無私の姿勢で従業員や顧客の幸せを第一に考える



以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆

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「無私で真正直」が盛運をもたらす

安田隆夫(ドン・キホーテ創業者 1949年~)
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■昨日(5月27日)は2013年1月から、
顧問をしている会社の第40期社員総会に
参加してきました。


この会社は、兄と弟、そしてそのお母さまが
力を合わせて立ち上げた焼肉店から始まりました。


途中、BSE問題や新型コロナウイルス感染拡大
などの影響といった幾度もの困難を乗り越え、
ついに昨年、年商100億円という大きな節目を
達成。今も堅実に成長を続けています。





■今回、創業者の兄が相談役になり、弟が会長に、
そして兄の息子が社長、弟の息子が専務に、その
30代の2人を支える現場叩き上げの2人が常務と
いう、新たな役員体制になります。


この世代交代を通じて、ひとつの企業がどのよう
にして未来へとバトンをつないでいくのか、その
重要な一端を見せていただいた気がしました。
今回はその概要を共有します。





■現在、日本にはおよそ400万社の企業が
存在しますが、上場企業はそのうちわずか0.01%、
約4,000社に過ぎません。


その上場企業の中でも、年商100億円未満の
企業は全体の約3割(1,132社)。


つまり、非上場でありながら、創業から一代で
年商100億円を超える規模まで成長する企業は、
非常に珍しい存在であることを、あらためて実感
しました。





■この会社が、ここまで成長し続けている要因は
多々ありますが、その一つは今回、新役員体制を
担う4人へのスムーズな権限委譲があります。


それを顕著に感じられるようになったのは、
若手経営陣によって中期経営計画を策定した
2018年頃からです。


この取り組みを通じて、彼らは「現場の実務」
から「経営者の視点」へと視座を引き上げ、
業界や社会全体を俯瞰する力を身につけていった
のです。


さらに、彼らは具体的な成長戦略を立案・提案し、
その実行に責任を持つという貴重な経験を積んで
いきました。





■もちろん、その過程でベテランの経営陣には
口を出したくなる場面もあったことでしょう。


しかし、創業者世代はその思いをあえて飲み込み、
若手を信じて任せるという選択をされました。


「会長業はガマン業」と言われますが、
「俺の時代は…」を封印し、未来を信じてバトン
を渡すという決断は、簡単なようで非常に難しい
ものです。





■この会社の成長の礎(いしずえ)になっている
のは、創業者兄弟の生き方と仕事に対する真摯な
姿勢があります。

そしてそれは、経営理念として明文化され、
社員一人ひとりの心と行動の軸になっています。


世の中には多くの会社が理念を掲げていますが、
ここまで愚直に理念を実践されている例を私は
ほとんど知りません。


それは、コンサルや教科書が提供する表面だけの
カタカナ言葉である
「PMVV(Philosophy、Mission、Vision、Value)」
などとは一線を画した、泥臭く、地に足のついた
本物の理念です。





■総会のあとは懇親会が開かれ、創業者兄弟から
社員や取引先に向けたメッセージが伝えられまし
た。


会場には自然と涙を流す方々が多くいらっしゃり、
それは、誰もが創業者の生き方そのものを尊敬し、
心から共感している証だと感じました。



最後は、「100年企業」を目指すという会社の
明確な目標に向けて、それぞれが決意を新たに
する静かな熱気に包まれて、会は幕を閉じました。




この会社の皆さんと長くご一緒できていることに、
深い意味と学びを感じています。

かかわる一人として責任と誇りを持ちながら、
これからもその歩みに刺激を受けつつ、

共に学び、共に喜びながら仕事に取り組んで
いきたいと思います。



以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆


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「任せることは、手放すことではなく、
共に成長することだ。」
 
安藤忠雄(建築家 1941年~)
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■先週の活動は、月曜日の名古屋から始まり、
金曜日は宇都宮。そして日曜日には池袋で関係
している会社の年次総会に参加してきました。


今回、年次総会を行った会社は、37期を迎える
会社です。現社長のお父さまが新潟県から上京し、
立ち上げた会社は、今や社員数300人に迫る勢い
で成長を続けています。





■人に個性があるように、会社にもそれぞれ
「社風」があります。


とりわけ中小企業では、トップの仕事観や人生観
などの哲学(フィロソフィー)と人柄が社風に
色濃く表れます。


今回、総会に参加した会社の場合、筆者が感じて
いる社風は、


<勤勉>

<優しさ>

<真面目>

<柔軟性>

<堅実>です。


これらの社風は現社長の人柄とも重なりますが
創業者の哲学や人間性がその源(みなもと)に
あります。





■哲学や社風について考える中で、興味深い一文
があります。
それは、1922年に来日したアインシュタインが
残した、日本という国への以下の賛辞です。



<以下>


近代日本の発達ほど世界を驚かしたものはない。
その驚異的発展には他の国と違ったなにものかが
なくてはならない。

果たせるかなこの国の歴史がそれである。
この長い歴史を通じて一系の天皇を戴いて来たと
いう国体を持っていることが、それこそ今日の日
本をあらしめたのである。

私はいつもこの広い世界のどこかに、一ヶ所ぐら
いはこのように尊い国がなくてはならないと考え
てきた。

なぜならば、世界は進むだけ進んでその間幾度も
戦争を繰り返してきたが、最後には闘争に疲れる
時が来るだろう。

このとき人類は必ず真の平和を求めて世界の盟主
を挙げなければならない時が来るに違いない。

その世界の盟主こそは武力や金の力ではなく、
あらゆる国の歴史を超越した、世界で最も古く
かつ尊い家柄でなくてはならない。

世界の文化はアジアに始まってアジアに帰る。
それはアジアの高峰日本に立ち戻らねばならない。
我々は神に感謝する。神が我々人類に日本という
国を作って置いてくれたことである。

<以上>






■国も会社も、そのトップに立つ人の「哲学」や
「人柄」が組織全体の雰囲気や方向性を大きく
左右する。そんな当たり前のことを、最近あらた
めて強く感じています。


よのなかを見渡しても、企業ぐるみの不祥事を
引き起こす会社では、やはり経営トップの考え方
や姿勢に問題がある場合が多いように思います。


一方で、長年にわたって信頼され、安定して成長
を続けている企業には、誠実さや人間的な魅力に
あふれたリーダーがいるものです。





■そう考えると、リーダーが持つ「哲学」は、
単なる経営方針ではなく、その組織の文化や
未来をつくる“根っこ”のようなものなのかも
しれません。


組織や社会の「空気」は、目に見えないけれど、
確かに人から人へと伝わっていくものだからこそ、
大切にしていきたい・・・。


あなたの信じる「あり方」は、今の家庭や職場、
社会に、どんなかたちで表れているでしょうか?


以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆

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「2025年になったら、日本は再び立ち上がる
だろう。2050年には、列国は日本の底力を認
めざるを得なくなるだろう」

森信三(教育者 1896~1992年)
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■先週の金曜日(5/9)の夕方、銀座での打合せ
を終え、久しぶりに銀座中央通りを4丁目から
1丁目辺りまで歩いてみました。


通りを歩いてみると、通行人の7割~8割が外国
人の旅行者であることにビックリしました。


以前、家族で京都の金閣寺に行ったときに
私たち家族以外は中国人観光客だった時も
おどろきましたが、


今回、銀座を歩いている人たちの国籍は種々雑多
で、何語を話しているのかは分かりませんが、世
界各国の言語が聞こえてきます。


あらためて、日本が世界中から人気の観光地であ
ることを体感しました。





■同じく先週、かかわっている会社の会議に参加
しました。この会社では、昨年6月に行った幹部
合宿で、会議体の方向性を変えることを決めまし
た。


そして、今年1月から会議体の内容を大きく見直
し、修正をくわえながら迎えた5回目の会議です。


毎回、会議の前に社長・専務と打ち合わせを行い、
前回の振り返りから、今回の会議の方向性や内容
をすり合わせながら準備を進めています。





■ファシリテーターを務めるのは、現社長の長男
である専務です。


進行役であるファシリテーターは
「対等な仲間の一人」として場をつくることに
留意し、進めていきます。


専務が発する言葉は「問いかけ」がベースです。
例えば、「どう思いますか?」「他にアイデアは
ありますか?」などの言葉で、参加者の考えを
引き出すスタイルです。


そして、発言を遮らない・否定しない・正解探し
をしないので、役職や立場に関係なく意見を言い
やすくなり、いわゆる心理的安全性が高まってい
ることが感じられます。





■4月から新たに加えた議題の一つが、
「よかった取引(業務)事例」の共有があります。


今回、ファシリテーターは参加者一人ひとり、
全ての参加者から「よかった取引(業務)事例」
について、丁寧に質問し、その内容の解像度を上
げていきました。


幹部はその質問に答えることで、取引の内容を
振り返り、それに携わった部下のガンバリに
ついて語り始めます。


会議の後半には賞賛と拍手が自然と沸き起こる、
温かい雰囲気が広がっていきました。





■この会社は「人を大切にする経営」を
標榜・実践する会社ですが、


会議体においても、上意下達型ではなく、
共創・信頼・自律をベースとした
「会社から仲間へ」の思想で議事を進めています。


管理中心の従来型会議の場合、
会議は、報告と指示の場になり、
モノゴトは「上司が決め」、
上司の評価を意識して参加者が萎縮してしまう
ことも少なくありません。


一方、この会社の会議のように「会社から仲間へ」
の思想で議事を進めることで、
全員参加型の対話・共感・創造の場になり、
「みんなで築く」風土が醸成され、
安心して意見が言える雰囲気がつくられます。





■今年に入り4ヶ月。1/3を経過した時点で
この会社の売上と粗利益額は、前年対比110%
を超える状況で推移しています。


さらに素晴らしいことは、今回の会議を夕方に終
え、翌朝1番には、全社員が目にする掲示板に前
日の会議で共有された「よかった取引(業務)事
例」が、担当者の名前入りで十数件分貼り出され
ていたことです。


自分の体臭が気にならないのと同じように自社の
会議に違和感を抱く方は少ないと思います。


しかし、会議は組織の“日常の中のもっとも象徴
的な行為であり、無意識のうちにその会社の
「本質」をあらわすものです。


本文が、皆さんの会社における会議のあり方を
振り返るきっかけとなれば幸いです。



以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆


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「嘘でない心からの賞讃を与えよう。
心から賛成し、惜しみなく賛辞を与えよう。
相手は、それを心の奥深くしまい込んで、
終生忘れないだろう」

デール・カーネギー(作家 1888~1955年))
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■マスコミは、連日、アメリカ大統領の政策から
各国がその対応に苦慮している内容を報道してい
ますが、


日本のGWは、各地で多くの人が楽しんでいる
ようすが、テレビなどで映し出されていました。


あらためて、80年続いている平和の有り難さを
感じた休日でした。





■さて、4月28日、中小企業庁から
「2025年度版中小企業白書」が発表されました。


この白書は毎年確認しており、過去10年の主な
テーマや方向性をまとめたものが下の表です。


この表をみますと、「人手不足」が継続
して大きな課題として取り上げられていることが
わかります。


過去10年で大きく取り上げられなかった年は
コロナ禍の始まった2020年から4年間で、
その他の年は重点的に取り上げられています。


「人手不足」とその対応について、本欄でも何度
か取り上げてまいりましたが、今回もその対応に
ついて考えていきたいと思います。





■「人手不足」の環境下であっても、私たち
中小企業が、成長し続けるには、以下に示した
「好循環のサイクル」を回していくことが大切です。


すなわち、経営理念の理解・実践・浸透を軸に
好業績~高待遇~採用~育成~成長~好業績の
循環を回していくことです。


上の図は過去の本欄でもご紹介しましたが、
今回は、その起点となる「好業績」について
少し掘り下げて考えてみたいと思います。





■好業績を実現するための第一歩は、
「高粗利益率の成功事例を作り上げること」です。


その際、粗利益=売値-原価の数式から、
原価を下げる打ち手より、
売値を上げる方策に力をいれることです。


売値を上げるためには、「付加価値」を上げ
なければなりません。


「付加価値」とは読んで字のごとく、
「価値」を「付け加える」ことです。


つまり、企業側の都合や作り手の論理
(プロダクトアウト)ではなく、


お客さまが本当に求めているもの(価値やニーズ)
を徹底的に追求し、それに応えることで販売活動
が不要になるほど自然に売れる仕組みを作ること
です。





■筆者が、年商3億円で債務超過の会社を
株式上場に導いた大きな要素の一つが、
「付加価値」の創出活動でした。


具体的には、入社した当初、一営業担当として
現場でお客さまと接した経験から、この会社の
主力商品を


「広告」から「広告の効果=集客」
と再定義したのです。





■お客さまにとって、広告を出す動機は売上を
上げるためですので、広告を出し、その対価に
見合った広告効果=集客=売上増が実現できれば
機会があった際に、再度利用していただける
可能性が高まるわけです。


それまでの営業会議では、精神論で売ることが
話され、営業パーソンは業績を上げるために、
値引きを行い、定価はあってないような状態で
したので、粗利益率は格段に上がりましたし、
売上も上がり続けました。





■まずは、粗利益率が10%以上高まる方策を
考えることです。


上記事例は、主力商品の定義付けを見直したこと
から始まりましたが、会社によっては、違う商品
群・違う地域・新たな商品や地域にある場合も
あります。


多くの場合、そのヒントは現場にあり、
お客さまが持っています。


SWOT分析などのフレームワークを使ったり
SEO(検索エンジン最適化)や、
LPO(ランディングページ最適化)などの
デジタルマーケティングの活用も重要ですが、


最終的には「現場の一次情報」に触れることが、
最も価値ある気づきにつながります。


そこには未来の会社を成功に導くヒントが
必ず隠されているはずです。


以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆

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「現場に答えがある。」

大山健太郎
(アイリスオーヤマ創業者 1945年~)
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